私のオススメ:「ペルセポリス」
今年(2008年)「ペルセポリス」というあるイラン人によって作られたアニメーション映画が上映された。私は、映画自身はまだ見ていないが、漫画版「ペルセポリス」を読んだ。
テーマはイラン生まれの一人の女性の成長。その中に革命やイスラーム体制などイラン社会情勢が織り込まれている。
自由奔放であり芯を持った主人公が、イラン社会やオーストリアの生活とぶつかり合いながら成長していく様を描いている。
彼女、作者でもある、は比較的リベラルな家庭に育ち、リベラルな価値観を持って生きている。その彼女がイスラーム革命後のイランや学生運動前後のオーストリアをどう生きたのか、聞いただけでとても興味をそそられる。
詳しい内容は、実際に読むか見るかして知るとして、私は一点だけ強調したい。この作品は、個人の感情を伝える重要な資料だと。
私たちは、いつも抽象的なイランを見てきた。イスラム主義・シーア派・「悪の枢軸」・・・。私たちが持つイランのイメージは女性の黒いスカーフぐらい画一的で 、ワンパターンなものだ。
それが肯定的であれ、否定的であれ、発信源がイラン側・イスラーム側 であれアメリカ側であれ、個々人の声ではなく公的な没個性的にイランが描かれている。まるで、金太郎飴のように。
しかし、この作品では、個性の強い主人公マルジャンの揺れる想い・葛藤を通して、実際に生きる特定のイラン人の声を受け取ることができる。
もちろん、マルジャンのような人間が多数派だとは言えず、またこの作品がイラン国内で批判を受けていること(E'temad-e Melli紙2007.5.21)は事実でありこの作品をイランのすべてであると受け入れるのは問題かもしれないが、このように考えるイラン人がいるのだということを知ることは大変有意義なことである。
それが、これまでのイマジネーションの限界、「抽象的なイラン像」を解体して 、思い悩む様々なイラン人に思いはせることができるようになるのではないか。
マルジャン・サトラピ,園田恵子訳 「ペルセポリスⅠ」バジリコ,2005
マルジャン・サトラピ,園田恵子訳「ペルセポリスⅡ」バジリコ,2005
T.K(国際基督教大学2年)
